ここ2~3日のTV・新聞で全国的に報道され、このニュースを始めて知った人も多いだろう。
事件の概要はこうだ。
■平成11年7月、静岡県浜松市の国道152号の路上(通称自動車街)で、当時16歳の女子高生、落合真弓さんがひき逃げされた。現場は片側2車線の直線道路で、夜は時速80Km以上で飛ばす車も多い。彼女は頭を強打して即死。数日後にひき逃げしたと思われる車が市内で乗り捨てられているのが発見された。
犯人はしばらく見つからなかった。それもそのはず犯人は日系ブラジル人で既に国外逃亡していたからだ。そして捜査の続行は絶望的に思われた。ブラジルと日本の間には、犯罪人引渡しに関する条約が結ばれておらず、日本で犯人の裁判を行うことができなかったからだ。
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彼女と出会ったのは彼女が中学2年の頃であったか。中学の教師である妻の教え子であった彼女が友達を連れて僕のアパートに遊びに来た。「おとなしくて真面目そうな子だなあ。」というのが第一印象。最初ははずかしそうにしていたけど、だんだん慣れてくると僕とも普通に会話を交わせるようになった。
母親は病弱で近くのR病院に入院していたようだ。父親は運送業とかで、夜間勤務のためか家にいる事も少なかったらしい。当然、お母さんの世話とか家事全般は彼女一人でやらなければならず、わがままを言いたい年頃なのに、かわいそうだなあと思った。
その頃、僕たち夫婦には子供がいなかったせいもあり、彼女達に親近感を抱いた僕は、その日夕食をご馳走した。近所のお好み焼き屋さんに行き、「好きなものを注文してもいいよ。」と言うと彼女は大喜びで好きなものを頼んだ。友達といる時の彼女は本当に楽しそうだった。親に甘えたい年頃なのに、父親は不在気味で母親も病気。本当につらかったろうと思う。
それから2年後、彼女はひき逃げ事故で帰らぬ人となった。翌日の新聞で訃報を知った僕は言葉を失った。あの日の彼女の笑顔がはっきりと浮かんだ。その後、病弱だった母親も後を追うように亡くなった。娘を失った悲しみが彼女の死を早めたのは確実であったろう。
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ひき逃げ犯の名前は、ヒガキ・ミルトン・ノボル(31)。ブラジルに逃亡してから結婚して、2児の父親として平和に暮らしていた。今回、ブラジルにて代理処罰による初公判が行われたのは、父親の敏雄さん達の地道な努力が結ばれた結果だ。平成17年に同様の事故で娘を亡くした湖西市の山岡夫妻とともに、ブラジル人の犯罪人引渡し交渉を求める署名活動をずっと続けてきた。地元選出の国会議員、片山さつきさんにも協力を仰ぎ、麻生外務大臣を訪ね、国に何度となく働きかけてきたのだ。
ヒガキ被告は罪を認め、「遺族に謝罪したい。」と言っているが、はたして本心はどうなのだろうか。TVでみると外見は日本人と変わらない普通のおじさんに見えた。反省しているような表情は残念ながら見えなかった。裁判は1~3年はかかり、罪も軽いものになるだろうと予想される。禁固刑は免れて、社会奉仕だけで済む可能性もあるという。保険に入っていたとは思えないので、保険金は払えないだろうが、一生遺族には誠意を見せて償ってほしい。
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